腰部脊柱管狭窄症ってどんな病気?

このサイトでは、腰部脊柱管狭窄症を治すための基本的な知識をまとめています。まずは、その症状と原因を見て行きましょう(※脊柱管=神経や血管の通る背骨の一部分)。

腰部脊柱管狭窄症の症状と原因

<その症状>
初期段階の症状は、腰の痛みや足のしびれ、それが原因の歩きにくさなどです。

歪みが進み、腰椎の圧迫が大きくなると、しびれや痛みが増して、そのうち数メートル歩くのがやっとという状態になってしまいます。ただ、この症状は継続せず、しばらく休むと収まります。

こうした状態は「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれ、腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状の1つとされています。さらに悪化すると、尿意や、失禁などの排尿障害が出てきますので、早め早めに治療を受けることが大切です。

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<その原因>
脊柱管が狭くなってしまう要因としては先天性のもの後天性のものが考えられます。先天性脊柱管狭窄症は、生まれつき脊柱管が狭いことが原因。

一方、後天性脊柱管狭窄症の原因には、黄色靭帯の肥厚、すべり症、椎間板ヘルニア等の合併狭窄など、様々なものが挙げられます。
ただ、発症するのが50歳~80歳くらいの年代が多いことから、加齢によって軟骨や骨が変形しやすくなることが、根本的な原因と考えられています。

腰に負担がかかるスポーツや動作を続けていたり、前かがみや座りっぱなしなど長時間、同じ姿勢をとる環境にいる場合は進行しやすいと言われています。少しでも心当たりがある場合は1度専門医の診察を受け、現在の状態を確認してもらうとよいでしょう。

自然に治ることはない?腰部脊柱管狭窄症の主な治療とは

腰部脊柱管狭窄症は、自然に治ることはまずありません。急激に悪化することは稀ですが、それでも徐々に進行していくので、おや、と思った段階で早めに手を打つことが望ましいと言えます。

腰部脊柱管狭窄症の治療について説明するドクターのイメージ

治療に関しては、初期の段階では薬物療法、理学療法、装具療法、神経ブロックといった保存的治療が一般的。

保存的治療を数ヶ月から半年程度続けても効果がなく、間欠跛行がひどくなったり、安静時にも痺れが出る場合、排泄機能の障害がある場合は、手術治療が検討されます。

手術の目的は脊柱管を広げることで神経への圧迫を取り除くことですので、保存的治療と比べると根本的な原因を取り除くことができるというメリットがあります。

手術の方法は痛みの原因により異なりますが、基本的には椎弓を部分的に削る開窓術や、全てを除去する椎弓切除術などが行われます。椎弓を削った後で脊椎が不安定になった場合は、脊椎固定術を行う場合もあります。

病院選びで気をつけたいこと

腰部脊柱管狭窄症の手術は神経付近を触ることになるため高い技術が必要で、合併症などのリスクを伴います。

経験が問われる部位の疾患ですので、良い医師にめぐり逢えるか、信頼できる病院が見つかるかが重要なポイントとなります。

病院の中には脊椎・脊髄関連の疾患の治療に特化している専門病院もあれば、総合病院でありながら脊椎・脊髄の専門外来を設けて積極的に治療を行なっているケースもあります。

一般的にそうした病院の違いを見つけるのは難しいと思いますので、このサイトでは腰部脊柱管狭窄症の治療に定評のある病院の情報を集め、厳選してまとめてみました。

これから腰部脊柱管狭窄症の治療を受けようと考えている方の参考になれば幸いです。

椎間板ヘルニアとの違い

腰部脊柱管狭窄症とよく似た症状を発症する疾患に椎間板ヘルニアがあります。腰部脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの違いはどこにあるのでしょうか。違いを比較してみましょう。

腰部脊柱管狭窄症 椎間板ヘルニア
原因 腰椎の脊柱管が狭まり内部の神経を圧迫 椎間板が破れて髄核が飛び出し神経を圧迫
発症年齢 多くが50歳以上 20~40歳に多く、若年でも発症
症状 下肢の痛みとしびれ、間欠跛行 20~40歳に多く、若年でも発症
痛みの程度 ヘルニアのような激痛がない 腰と下肢の痛み
痛みの出方 屈み、座り姿勢で痛みは軽減 屈み、座り姿勢で痛みが増強

間欠跛行というのは、歩いているときに痛みやしびれを感じて、休むと改善し、その後歩き出すとまた痛みとしびれを感じるというものです。そのため、続けて歩くことができなくなります。

腰部脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアは、よく見てみると症状や痛みの出方などに大きな違いがあります。ですが、椎間板ヘルニアを併発した腰部脊柱管狭窄症では激痛が走る場合もあり、高齢の方の椎間板ヘルニアには間欠跛行がある場合もあります。

腰部脊柱管狭窄症の治療とリハビリ

腰部脊柱管狭窄症の手術方法やリハビリ方法、手術の際の病院の選び方についてご紹介します。

治療方法

腰部脊柱管狭窄症を治療する方法はいくつかあります。選択する治療方法によって手術法も異なってきますので、この違いについても比較してみます。

術式 手術時間 麻酔 傷痕 入院
経皮的内視鏡下椎間板摘出術 30~60分 局所麻酔 10mm ・日帰り手術可能
・入院する場合1泊
開窓術 約2時間 全身麻酔 120~150mm ・事前に検査入院が必要
・術後のリハビリに約13日間
腰椎椎弓切除術 約30分 全身麻酔 18mm ・前日に入院
・術後4~7日で退院可能
脊椎固定術 2~3時間 全身麻酔 18mm×1
12mm×4
・前日に入院
・術後2週間ほどで退院可能
術式 予後 特徴
経皮的内視鏡下椎間板摘出術 当日に歩行可能 最も切開部が小さく体への負担も少ない。入院の必要がない。
開窓術 翌日から歩ける場合も 削る骨を最小限に抑え、術後の腰痛を軽減させる。
腰椎椎弓切除術 翌日から飲食可能 傷痕が小さく、筋肉を切開しない。入院期間が短い。
脊椎固定術 ほとんどが術後48時間で歩行可能 術後1か月間の痛み回復が他の術式より早い。
術式 手術内容
経皮的内視鏡下椎間板摘出術 ・背中や側面部分の皮膚を切開
・切開部からチューブを挿入
・チューブから内視鏡、用具を挿入
・モニタで確認しながらヘルニア摘出
開窓術 ・背中を切開して筋肉を剥がす
・椎間関節を削り黄色靱帯を切除
・痛みの原因となる部分を削る
・筋肉や皮膚を縫合
腰椎椎弓切除術 ・背中を切開して内視鏡を挿入
・内視鏡画像を見ながら椎弓と黄色靭帯を切除
脊椎固定術 ・背中の皮膚を切開
・切開部から筋肉間にレトラクター挿入
・椎弓を削り黄色靭帯や椎弓を切除
・狭くなっている椎間を拡大
・逆側の皮膚を切開し椎弓根にスクリュー挿入
・椎間から椎間板を除去
・抜いた骨を砕いて移植
・椎間にチタン製ケージを挿入
・レトラクター側からもスクリュー挿入

脊椎固定術は背中側から手術する方法をご紹介しましたが、体の側面を切開する方法もあり、その場合も手術の目的はほとんど同じです。

どのような病院がいいか

腰部脊柱管狭窄症の治療を行いたいという場合は、初期の段階であれば保存的治療を薦めてくれる病院を選ぶべきでしょう。

症状が重度の場合は別ですが、半年間ほど保存的治療を行ってから、それでも改善が見られなかった場合に手術に踏み切るのが理想的です。保存的治療の提案をしてもらえないようなら、他の病院に行くことをおすすめします。

また、腰部脊柱管狭窄症の手術は非常に高い技術力が必要になるため、脊椎を専門としている病院を選んだ方が、安心して手術を受けられるでしょう。その病院の治療実績なども重視したいものです。

病院によっては今回ご紹介した手術法の中の、一部しか取り扱っていないということもあるので、手術法に希望がある場合は、その方法を取り扱っているかどうかもあらかじめ確認しておいてください。

リハビリについて

腰部脊柱管狭窄症のリハビリは、術後動けるようになったらすぐに開始されます。そうしなければ、筋力や柔軟性の低下を招いてしまうためです。

手術後のリハビリ

手術後は下半身の筋肉トレーニング、ストレッチと、歩行が難しいようであれば歩行訓練があります。また、痛みや筋肉の緊張を緩和させるために、電気治療、温熱治療もリハビリに組み込まれます。ある程度動けるようになってきたら、腹筋のトレーニングも同時に行います。

退院後・保存的治療のリハビリ

腰部脊柱管狭窄症は再発してしまうこともあるため、退院後もリハビリを継続的に続けることをおすすめします。下半身や腹部の筋力を高めるトレーニングやストレッチが効果的で、仰向けになって両腕で両膝を抱え込む、片膝を立てて立てた方の足をゆっくりと曲げたままキープするなどのストレッチが最適です。

退院後や保存的治療の場合、これらに加えて日常生活の姿勢を改善することも大切です。腰を反らせる姿勢は腰に負担をかけるため、なるべく正しい姿勢で過ごすようにしてください。

参考:(PDF)東北理学療法学: 腰部脊柱管狭窄症の術後6カ月の歩行能力とQOL[PDF]

腰部脊柱管狭窄症だけじゃない!腰痛の原因となる様々な病気

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