原因から治療まで!腰部脊柱管狭窄症のパーフェクトナビ
このカテゴリでは、腰痛の原因となる様々な病気について解説しています。
腰痛は様々な要因で発症します。
単なる疲労による一過性の腰痛もあれば、症状が進行して腰部脊柱管狭窄症などの重症に至るものもあります。
そのため、同じ「腰痛」と一括りにするのではなく、いつもと違う痛みが長期的に続いた場合には、無理をせず早めに医師の診断を受けるようにしましょう。
このカテゴリでは、腰痛の原因としてよく見られる病気を取り上げ、その症状や原因、診断法や治療法について解説しています。
変形性脊椎症は、加齢によって生じる脊椎の退行変性であるため、高齢者に多くみられます。椎間板が変性することによって異常な動きを止めるために骨の棘が形成されてしまいます。
軽症もしくは初期症状では無自覚なことが多いのですが、慢性の疼痛や可動域の制限が現れ、感覚障害やしびれなどの神経根症状が出ることもあります。 脊柱管が狭窄すると、腰部脊柱管狭窄症として症状が現れます。変形が進むと椎間板の変性も生じ、後方関節の変形性関節症変化や、椎体の上下縁に骨棘が形成されます。
診断はX線検査などによって行われますが、MRI検査によって脊柱管狭窄症や神経根症状の有無を確認することもあります。
無症状のうちは特に治療の必要はありませんが、痛みが出ている際にはコルセットによる安静、薬物療法、理学療法を行います。
腰椎変性すべり症は、腰部脊柱管狭窄症と似た症状が現れます。 少々の距離は問題なく歩行できても、だんだんとお尻や太ももが痛み出し、歩けなくなってしまいます。少し休むと歩けるようになることが特徴です。
腰部には神経を入れた「硬膜管」が通っており、これを脊柱管と呼びます。腰椎変性すべり症では、腰椎のずれによって脊柱管が狭くなり、神経や神経根が圧迫されるため、歩行障害などの症状が出てきます。
診断はX線検査やMRIによって判断され、腰椎を前後に曲げるなどの状態で画像を撮って診断を行います。 すべり症の治療は腰椎の牽引や温熱療法、硬膜外注射のほか、日常生活への支障の程度に応じて神経の圧迫の除去や固定術などの手術治療が検討されます。
骨粗鬆症は骨の量(骨密度)が減ることで、骨折しやすい状態になることが特徴です。 一般的に高齢になるにつれて骨粗鬆症のリスクが上がるとされますが、症状そのものには特に痛みがないため気づきにくく、骨折をすることで骨粗鬆症と診断される場合があります。
骨粗鬆症は骨の形成と吸収のバランスが崩れることによって起こるもので、老化の他にも女性ホルモンの減少によっても引き起こされます。
診断はX線のほか、超音波やMD法、CT法などさまざまな検査が行われます。内服薬の服用による治療が主体ですが、骨折をともなう場合は骨折の治療も並行して行います。
骨粗鬆症は予防ができる病気です。普段から転ばないように適度に運動をして筋肉を鍛えたり、カルシウムなどのミネラルやビタミンなどを摂る、アルコールを控えるなどの方法が有効です。
脊椎腫瘍は、がん細胞が脊椎の骨に運ばれ、増殖して骨を破壊する病気です。 腫瘍が膨らむにつれて脊髄が圧迫され麻痺を生じたり、破壊された脊椎が負荷に耐えきれなくなることで骨折が起きるようになります。 診断はX線とMRIによって行われるほか、他の骨への転移を確認するために骨シンチグラムを用います。また、骨折のリスクを判定するためにCTも使われます。
治療にはがんに対するホルモン療法や化学療法のほか、骨転移を骨硬化型に変化させるための薬剤を用います。 腫瘍が増大している場合には放射線の照射を行いますが、骨の破壊が進んでいれば、脊椎固定術で支持性を高める方法がとられます。
転移性の腫瘍の場合は、がんの種類と病状の進行状況に応じて治療を考える必要があります。
また、同じく細菌感染などで免疫異常が生じた際、強直性脊椎炎を発症する場合があります。強直性脊椎炎は症状の進行により、頸椎を含む脊椎の動きが悪くなるため体が前のめり気味になり、体を反らしたり上を見るといった動きに支障が生じます。
診断は腰痛や椎間板ヘルニアとの誤診を避けるため、血液検査やX線検査などを行い、関節炎の有無も含めて診断します。
原因の特定がされていない病気のため、根治療法はありませんが炎症を抑えながら体を動かすことが治療法となります。消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬を使うほか、歩行に支障が出ている場合は人工関節全置換手術が行われます。
脊椎椎体骨折は骨粗鬆症によるもののほか、転移性骨腫瘍や強い力により生じる外傷性椎体骨折(圧迫骨折)などさまざまな原因が考えられます。 骨粗鬆症による椎体骨折の有病率は60歳台で8~13%、70歳台で30~40%と高齢者に多いことがわかります。
尻餅など外からの力によって椎体を骨折した場合には、椎体前方もしくは後方に骨折を生じ、さらに骨折の範囲が広がると脊柱管にまでおよび、脊髄の麻痺が生じることもあります。 診断はX線検査によって行われますが、椎体骨折部の粉砕や脊髄損傷の可能性がある場合には、MRIやCTによって検査を行います。
骨粗鬆症の可能性がある場合には骨密度の測定を、転移性骨腫瘍の疑いがある際には骨新シンチグラフィー検査が追加されます。
治療は、骨折の原因によって変わります。圧迫骨折の場合は固定を行って安静にしますが、脊髄に影響が及んでいる場合には手術が必要になります。