原因から治療まで!腰部脊柱管狭窄症のパーフェクトナビ
ここでは腰部脊柱管狭窄症の手術方法にはどのようなものがあるか、また手術費用の目安について解説しています。
腰部脊柱管狭窄症の手術は大きく2つ。神経の圧迫だけであれば圧迫部を除去する除圧術が採用され、腰椎に不安定性があれば圧迫を除去するだけでなく固定術が行われます。
なお、開窓術と椎弓切除術は後方アプローチによる除圧術なので、合わせて腰椎後方除圧術と呼ぶこともあります。
腰部脊柱管狭窄症の手術は除圧術と固定術があります。ここでは代表的な手術方法の費用目安について紹介します。
治療費は保険の自己負担分をを病院へ一旦支払うことになりますが、高額療養費制度により加入している健康保険に申請すると一定の額を超えた金額(通常6~7割)が戻ってきます。
腰部脊柱管狭窄症の手術の費用を考える場合は、入院することも考えると手術費用以外に入院費用も考慮に入れる必要があります。
入院期間は以前は1ヶ月が当たり前だったこともありましたが、今は概ね2週間程度で退院できるようです(この期間は、病院によって大きく変わります)。
また、退院した後も通院すれば費用が発生しますし、コルセットや自宅のリハビリ用設備を購入したり、鍼灸に通うこともあるかもしれません。
手術を受ける場合はできるだけ余裕を持って、支払い時期や保険金が支払われる時期などについてもしっかり把握し、できるだけ計画的に進めるのがよいでしょう。
腰部脊柱管狭窄症の治療で、病院別の手術の特徴を一覧で紹介します。
品川志匠会病院には脊椎を専門に診療を行う脊椎外科が設置されており、こちらで腰部脊柱管狭窄症の手術を行っています。
頸を含めると、年間でなんと1,000件以上の手術を行っており、「一時的な症状を除き、恒久的に車椅子生活を余儀なくされた例はない」とのことですから、その技術力の高さが伺いしれますね。
新しい設備や技術を積極的に導入していますが、しっかりと安全性、確実性を見極めた上での導入です。多くの患者さんが信頼して品川志匠会病院で手術を受けています。
腰部脊柱管狭窄症の手術を執刀してくれる九段坂病院では、多くの患者さんが長年悩んでいた腰部脊柱管狭窄症による腰痛から開放されています。医師や看護師、リハビリ療法士など、すべてのスタッフが丁寧に対応してくれ、回復へのサポートをしてくれるのでとても心強く、患者からの評価も高い病院です。
国際医療福祉大学三田病院では、腰部脊柱管狭窄症の手術において腰部の骨や靭帯などのイチ部を削り、狭くなった脊柱管を広げることで、神経の圧迫を取り除き、痛みを緩和することを目的としています。さらに脊椎が不安定な場合は、金属のスクリューで脊椎を固定する手術も行います。
腰部脊柱管狭窄症の最小侵襲手術として、最小侵襲椎弓切除術、MIS-TLIF、LIF、CBTなどの手術方法を取り入れています。
岩井整形外科内科病院での腰部脊柱管狭窄症手術にはいくつかの方法があります。1つは椎弓の一部と肥厚した黄色靭帯を切除し、脊柱管を広げるという手術、もうひとつはさらに上下の骨を融合させる手術です。
術式はMELやME-PLIF/TLIF、XLIF、切開手術の従来法など複数あるので、症状に応じて適切な手術法で手術を行います。入院期間は4~14泊ほどです。
八王子脊椎外科クリニックでは、腰部脊柱管狭窄症の手術において「神経除圧術」、「脊椎固定術」、「脊椎制動術」、「経皮的椎体形成術」といった手術方法を採用しています。もっとも多い神経除圧術では、圧迫された神経を除圧する椎弓部分切除や、除圧とともに腰椎の強度を高める椎弓形成術で、身体への負担を少なく、症状の改善を目指します。
入院期間は3~7日程度と短いので、生活への支障も少なく手術を受けられます。手術実績が豊富なので、信頼して手術を受けられると患者さんからの評判が高い病院です。
東京腰痛クリニックでは、椎間板ヘルニアや脊椎圧迫骨折の日帰り手術を行っています。腰部脊柱管狭窄症においては東京腰痛クリニックで手術を受けられるケースもありますが、入院が必要となる場合が多いので、愛知本院で手術を受けることを勧められるようです。詳細については、診察時に東京腰痛クリニックの医師に相談してみましょう。
日本赤十字社医療センターでは、できるだけ身体に負担をかけず、長期間良好な状態を保つことができる手術法を選択肢、症状に応じて腰部脊柱管狭窄症の手術を行っています。 入院期間は2~7日程度のケースが多いです。
総合東京病院では、腰部脊柱管狭窄症においてまずは保存療法を行いますが、必要だと判断した場合には積極的に脊椎手術も行います。手術においては、術後に起こる腰痛を防ぐよう、低襲撃手術を心がけており、これによって腰椎の支持組織に対する侵襲を抑えることができます。
また、術後に腰椎が不安定にならず、脊椎インストルメントによる固定が不要となります。
村山医療センターの腰部脊柱管狭窄症手術では、脊柱管周囲の骨を削り取り、馬尾やその枝の圧迫を取り除いて、脊柱管を広げます。5つある腰の骨を繋げる椎間板の部分にダメージが大きい場合は、安定させるために骨の移植を行い、固定を追加することもあります。
手術ではできるだけ筋肉を傷つけないようにすることを意識し、術後の痛みを小さくするよう心がけています。早期リハビリ開始が可能で、入院期間1~2週間と短期間で済みます。
手術をしても筋肉や骨格の機能がほぼ温存され、長期的な予後を考えた際に、骨格の変形や症状再発が発生する可能性はかなり低いとされています。また、間欠性跛行症状への改善率が高いという特徴があり、その反面、腰痛への改善率は少々低め。ただし、腰痛改善度も従来の手術法と同等であるという報告がなされています[1]。
この手術は部分椎弓切除術とも呼ばれる除圧術の一種で、狭窄の原因となる椎骨の背中側の部分の中で、もっとも圧迫が強い部分の肥厚した黄色靭帯を骨からはがして摘出することで、狭まってしまった脊柱管を広げて圧力を緩和させます。
状態によっては骨の一部を切除することもありますが、ドリルで削るだけなので大掛かりな手術ではありません。
手術にかかる時間も1時間から2時間ほどですから、手術としては体への負担も軽いのが一番の特徴と言えます。
普通の外科手術と異なり、開窓術であれば翌日から歩行訓練が可能です。
腰部脊柱管狭窄症の症状にもよりますが、治療が必要になる状態というのは通常であれば歩けません。
そのため手術を行うのですが、手術をしたからといってすぐに歩けるものではなく、リハビリなどを交えながら回復することで歩行可能になっていきます。
しかし、開窓術であれば翌日から歩く練習ができるので、日常生活への支障も最小限に抑えることができます。
入院の必要性はありますが、1週間から2週間ほどの短期間で退院できるのは、他の手術法にはない特徴と言えるでしょう。
開窓術では3つの術式があるのも特徴です。
小さく切開した部分から患部を目視して行う通常法、顕微鏡で患部を確認しながら行う顕微鏡法、内視鏡を使って患部を確認しながら行う内視鏡法という3種類の術式があり、もっとも切開範囲が小さいのは1.5cmから2cmの切開でできる内視鏡法になります。
一番切開範囲が広い通常法でも皮膚切開は5cm程度ですから、開窓術は手術跡が残るリスクが少ないのも特徴となっています。
切開範囲や術式に違いはあっても、術後1週間の成績が大きく変わるというわけではありません。あくまでも術式が違うというだけで、どの術式であっても手術が成功した場合の成績はほとんど同じです。
この術式だから回復が早い、この術式だから完全に良くならないというような差はありません。
術式によって変わるのは、手術の難易度です。
切開範囲が小さい術式であれば、その分技術力が高くないと神経などを傷つけてしまうリスクも高くなります。切開範囲が広がれば術野も広くなりますから、成功する確率もアップします。
ただし、どの術式であっても簡単なものではありませんから、執刀医の技術力や経験も成績に大きく関わってきます。
もちろん切開範囲が小さい方が治りは早いですし、施術跡も目立ちません。出血量も少ないというメリットもあるので、この術式で手術を受けたいと思う方も多いでしょう。
その代わり、除圧不足になってしまうケースや後遺症のリスクがあるので、その点を踏まえて術式を選ぶ必要があります。
外側型腰部脊柱管狭窄症、中心型腰部脊柱管狭窄症
開窓術では術後5~6年の間は再発の可能性が低いですが、それ以上の年数になると重い腰痛を患う可能性もあります。術後5年半では71%が予後良好となっているため、約30%では何らかの不調が発生していると考えられるでしょう。
出典:Mindsガイドラインライブラリ『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011』
また、開窓術では脊椎から筋肉を剥がす必要があり、術後に多裂筋の浮腫や痛みが現れる可能性も。多裂筋の浮腫や異常は、下部腰椎結核症、椎間板ヘルニアの原因となるので、腰痛を再発させてしまうリスクがあります[2]。
例え開窓術の成績が良かったとしても、前述したリスクだけではなく、脊柱管を広げて圧迫を弱めるだけでは十分に改善できない可能性もあるのが実情です。
腰部脊柱管狭窄症の期間が長かった場合、体が圧迫状態に慣れてしまい、その支えを失うことで安定性が失われてしまうことがあります。
また、腰や骨盤などに何らかの障害があると、狭窄に不安定性が伴っていることもあります。
圧迫されている間は不安定性が顕著でなかったとしても、圧迫が緩和されると、不安定症状が現われたり、その症状が重篤であることも少なくありません。
こういった場合は、固定手術が必要になります。
固定の方法はいろいろありますが、一般的には自分の骨を移植して内固定します。
固定をすれば体を支える機能が回復しますから、安定性も保たれるようになりますが、その代わり腰椎が固定されてしまうことで他の部位への負荷が大きくなります。
特に、固定した椎間のとなりにある椎間や真上の椎間への負担は大きいので、椎間がどんどん変性するリスクが高くなります。
一度変性した椎間を元に戻すのは簡単なことではありません。
しかし、そのままではヘルニアや狭窄の再発などが発症する恐れがありますから、さらなる治療が必要となってしまう可能性もあるのです。
とは言え、腰部脊柱管狭窄症を治療しないわけにはいきませんし、開窓術は治療法の中でも安全性が高く、ダウンタイムも少ないのでQOLへの影響が最も少ないというメリットがあります。
手術によるリスクは、開窓術に限らずどのような治療法でもあることですし、リハビリなどで防ぐことも不可能ではありません。
それでもリスクが不安という場合は、最新式の治療法となる片側侵入両側除圧術があります。
この手術は、腰椎の支持性を守りながら、圧迫を引き起こす肥厚した黄色靭帯を摘出するので不安定性があっても固定することなく、良い成績を残せると言われています。
高齢者の術後成績も良いので、幅広い年齢層の腰部脊柱管狭窄症に対応します。
固定手術は不安定性を改善するには一番の方法です。
しかし、固定することによるリスクがありますし、状態によっては他の疾患を誘発する原因になってしまうこともあるので、あくまでも開窓術によって起こる症状改善の最終手段と認識しておきましょう。
健康保険適応で約20~40万円
腰部脊柱管狭窄症の手術の中では、最も古典的で一般的な方法です。腰部脊柱管狭窄症の手術としては効果的ですが、脊椎が不安定になることもあるため、この術式に改良を加えた手術方が用いられることも多くなっています[3]。
狭窄が強い場合、再手術の場合
症状再発の危険性があり、再手術をしなければならない可能性が高いとされています。長期的に見れば、どの手術法でも腰部脊柱管狭窄症再発の可能性はありますが、椎弓切除術では手術前よりも症状が悪化してしまうこともあり、その確率は17%だという報告もあります。
出典:脳神経外科ジャーナル『(PDF)腰椎脊柱管狭窄症の手術―病態,開窓術と術後成績―』
また、術後に腰椎すべり症の症状が酷くなる、新たに腰椎すべり症を発症するなどの可能性もあると言われており、症状の進行は65%、症状の発症は20%と報告されています。腰椎すべり症を発症してしまうと、腰部脊柱管狭窄症が治っても、腰痛や歩行の困難さは変わらないと言う結果にもなり得るでしょう。
出典:日本脊髄外科学会『(PDF)腰椎除圧手術後の変形―筋層構築的手術と開窓術の比較―』
健康保険適応で約20~40万円
ノミやドリルを使って椎弓を削るため、医師にとっては高い技術力と経験が要求される術式です。ですが、椎弓の切除を正確に行える術式でもあり、慣れた医師による手術であれば、症状に対して高い改善効果を期待できるでしょう。また、術後の腰痛改善率が高いとされていて、短期間での退院が可能だと言われています[4]。
ブロック注射などの治療をしても、3か月以上改善しない重度の症状がある場合
脊椎周辺の神経を損傷することによって、下半身に麻痺が起きる、感覚が弱くなるなどの症状が現れることがあります。また、同じように、神経を覆っている膜を傷つけることによる髄膜炎、大きな血管を傷つけることによる大量出血などの可能性も[5]。
当然、これらのことが起こらないように細心の注意を払って行われますが、このようなリスクが起きる可能性もあり得ます。ただし、脊柱管拡大術は安定性のある手術法で、術後に腰部脊柱管狭窄症が再発する確率も低いとされています。
自由診療で約130~140万円
椎弓切除術では脊椎が不安定になることが多いので、腰椎すべり症の防止のために、脊椎固定術を併用することがあります[6]。脊椎固定術はいくつかの種類にわけられ、背中側から手術をする後側方固定術、後方侵入椎体間固定術、腹側から手術をする前方固定術などです[7]。
椎間が不安定なことによる腰部脊柱管狭窄症の場合、手術によって椎間が不安定になる恐れがある場合、脊椎すべり症がある場合
脊椎周辺の神経や神経の膜を傷つけてしまうことによる合併症の報告があります。脊柱管拡大術と同じように、下半身の麻痺や感覚の鈍さ、排尿障害、髄膜炎などが現れる危険性が考えられます。
また、骨粗しょう症の患者に対して脊椎固定術を行っても、術後に固定が緩んできてしまう可能性も。そのため、脊椎固定術を行うかどうかは、経験豊富な医師によって正確に判断される必要があるでしょう[6]。
金属を体内に入れることになるため、金属アレルギーの症状がある方は手術を行えないこともあります。
保険適応で約40万円~60万円
[1]
参考:脳神経外科ジャーナル『(PDF)腰椎脊柱管狭窄症の手術―病態,開窓術と術後成績―』
[2]
参考:日本脊髄外科学会『(PDF)腰椎除圧手術後の変形―筋層構築的手術と開窓術の比較―』
[3]
参考:京府医大誌『(PDF)腰部脊柱管狭窄症に対する低侵襲手術』
[4]
参考:日本腰痛学会『(PDF)腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓還納式脊柱管拡大術の検討―椎弓切除術との比較―』
[5]
[6]
参考:日本医科大学医学会『(PDF)腰部脊柱管狭窄症の診断治療』
[7]